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Promenade II「三つの風景」

(1997)
加賀城 浩光
Hiromitsu Kagajo (1961.8.23 Miyazaki)

 作者は1961年宮崎県生まれ。2001年まで広島に在住し、マンドリンバンド「ブルーメサ」、マンドリンとギター、あるいは自らが発案し宮崎在住の楽器製作家・米丸健二氏と共同開発した楽器であるマンドチェロ(音域はマンドロンチェロと同様だが、構造はギターに近い)とマンドリンのデュオ「アコースティック・ボーイズ」での活動、楽団「プロムナード」主宰等の活発な活動を行ってきた。現在、福岡に在住し、作曲・編曲活動及びマンドチェロ奏者として活動すると共に、各地の大学等で演奏指導を行い後身の育成にも力を注ぎ、自らの音楽を通し、全国の演奏者と交流を持つなど、活発な活動を続けている。合奏作品として「Promenade I〜IX」、「組曲」シリーズ、「前奏曲」シリーズ、他に小品あるいは独奏曲・二重奏曲を多数作曲されている。2007年2月17日には、作者と同年生まれの小林由直氏・吉水秀徳氏と共に「CONCERT 1961」を開催し、大盛況を得た。
 本作品は、作者記にもあるとおり、Promenade Iの北海道初演を行った、小樽商科大学プレクトラムアンサンブル(OPE)定期演奏会を訪れた際に、その風景をスケッチしたもの。「『北』の風景」「『海』の風景」「『道』の風景」で「北海道」の語呂合わせとなっているが、これは1996年当時、パソコン通信NIFTY-Serveに存在した、当団の指揮者である横澤が主宰であった「パティオ・デ・マンドリーノ」と言うコミュニティ上で、北海道へ行くと言う作者に対して、北海道出身+OPE出身の筆者が提唱したものである(筆:北・海・道で三楽章ってどう? 加:それいいね!もらい! と言ったノリ)。
 曲調は極めてシリアス。必ずいい意味での何らかの”遊び”を入れる作者としては(楽章名以外に)珍しく”遊び”の無い曲である。コントラバスで始まり、コントラバスで終わる構成は、他にはなかなか見られない。また、コントラバスによって冒頭で提示されるテーマが、曲全体を通して印象深く顔を出す等、コントラバスの使い方に特徴を持たせている。
 なお、作者手書きの原譜には、(1)1章冒頭及び3章最後のコントラバスはarco指示(現在頒布の譜面ではpizz指示)、(2)2章から3章の間に「音を出さず(体をうごかさず)第3章へはいる」の指示(現在頒布の譜面には無い)、(3)「1章のみ単独で演奏されてもかまいません」の表記が冒頭にある(現在頒布の譜面には無い)、と言った違いがある。(1)(2)のいずれも、初演後しばらくしてから、困難さ(arcoでのピッチの不安定さ、体を動かさず止まっている事の難しさ)を考えて変更されたものである。本演奏では、作者の本意を尊重し、原譜通りの指示に従って演奏してみたい。

【作者記】
 本曲は「北の風景」「海の風景」「道の風景」の3章から構成されております。もうおわかりの事と思いますが、この三つの風景とは北海道の風景の事です。1996年、プロムナードIが北海道初演となり、私は初めて北海道に行く機会に恵まれました。この曲はその時に見た風景を五線紙にスケッチしたものです。皆様の持っておられるイメージと比べてお聴き下さい。

「北の風景」
 北へ向かったのは11月末。真っ白な大地を想像していたのですが、一面銀世界というには早すぎる訪問でした。しかし風景は冬そのもの…うす暗い雲が大地にふさがり、凍えた木々に風雪が容赦なく襲いかかります。本当に自然は凄いと感じました。期待と不安に心揺れながら、私の乗った電車は更に北へと走っていきます。

「海の風景」
 小樽に向かう電車は海沿いを走ります。鉛色の空、それをうつす海。波は電車までのみこんでしまうくらい激しく暴れていました。そんな荒々しい風景ではありましたが、なぜかその海に寂しさを感じました。色々なジャンルの作曲家がこの北海道を題材にして曲を書いていますが、この風景を見れば何かを感じないわけはありません。この私でさえ無言のまま海を見つめ、以前書いたモチーフを頭の中でくりかえしていました。

「道の風景」
 降り続く雪は歩いてきた足跡を次々と消していきます。そして目の前の風景をも私から奪おうとします。どこまでも続く道。私は今まで歩いてきた風景を思い出しながら、そしてこれから出会う風景を夢見ながら、どこまでも、どこまでも歩いていきます。

参考:加賀城浩光・ジジ音楽工房

第35回定期演奏会より/解説:えぞ