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夏の庭 黄昏

Giardino d’Estate, Crepuscolo (1941)
プリモ・シルヴェストリ 作曲
Primo Silvestri (1871.5.9 Modena〜1960.2.6 Modena)

 作者は14才の時から音楽を学び始め、ギターをセミル教授について習い、その後ペザロの音楽学校教授ビアンキーニに和声、対位法とピアノを学んだ。モデナのウンベルト一世吹奏楽団の指揮者に任命され、その後モデナ・マンドリン合奏団を創設した。イル・コンチェルト誌の主幹としてイタリアマンドリン界を啓蒙した。マンドリン合奏曲として「静けき夜」、「夜の静寂」、「ノスタルジー」など多数の作品がある。
 本曲は前述のコンクールにおいて第3位を受賞した。

 外形上の特徴として、イタリアのマンドリン合奏曲の中でも最大級である編成の大きさがある。原譜ではオッタヴィーノ(オッタヴィーノという楽器は現存が確認されていないが、古楽器においてしばしば解釈されるものとして「1オクターヴ高い楽器」、伊語においてピッコロの事、などとある事から、当時において、流通され得なかった当該撥弦楽器が存在したのかもしれない)、クワルティーノ2部、マンドリン6部、マンドラコントラルト2部、マンドラテノーレ3部、マンドロンチェロ2部、マンドローネ(バス)、ギター、トライアングル、シストロ(同名のエジプト起源の打楽器ではなく、音程のある鐘のような楽器)、ティンパニと、弦楽器のみでも18パートを数える。このうちオッタヴィーノ、クワルティーノ、マンドラコントラルト、シストロ、ティンパニにはAd libitumとの表記があり、現在この作品が取り上げられる際にはパートが省かれることも多い。
今回の演奏ではオッタヴィーノとクワルティーノについてはマンドリンで代奏することで曲のもつサウンドを再現したい。なお、原譜でクワルティーノおよびマンドラコントラルトが4度移調楽器として書かれていることから、オッタヴィーノについてもオクターブ移調楽器として記譜されていると解釈した。

 オーケストレーション上の構成では、高音楽器のハーモニーに始まり、オーケストラ全体の豊かな響きを経て、再び高音楽器のハーモニーで曲を閉じるように書かれている。前述のように本曲は特に高音楽器に多くの楽器が割り当てられており、高音の分奏による響きの美しさは特筆すべきものがある。構成上ハーモニーの重心が高音から低音を経て高音へ遷ることは、青空が赤い夕焼けを経て夜の藍色に遷り変わる黄昏に喩えることができよう。
 曲は自由な形式に依るが、冒頭旋律に現れる2度下降形が曲全体に渡って用いられ、統一感を示している。ギター独奏で提示されマンドラテノーレ独奏で再現される主題は提示・再現ともに主調であるが、扱いは軽くエピソード的である。楽想の中心をなす主題は平行調、主調、主調、下属調の順に現れ、またその旋律も変化が大きい。ここから、本曲の構成は統一感をもたせながらも変化と遷り変わりに主眼を置いたものだと考えることができる。

参考文献:
 中野二郎著「いる・ぷれっとろ」

第38回定期演奏会より/解説:kiyota