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幻想曲「華燭の祭典」

Festa di Nozze,Fantasia in 3 Tempi (1903)
ジュセッペ マネンテ 作曲/中野 二郎 編曲
Giuseppe Manente (1867.2.2 Sannio〜1941.5.17 Roma) / Rid. Jiro Nakano

 作者はイタリアの作曲家。王立陸軍学校付属の軍楽学校にて音楽教育を受けた後、軍楽隊長を歴任した。この経歴から、作品は主に吹奏楽のために書かれている。マンドリン合奏のためにも多くの作品を残しており、その中には各地のコンクールに入賞した幻想曲「秋の夕暮れ」や序曲「メリアの平原にて」、4楽章の交響曲「マンドリン芸術」などの重要な作品が含まれる。
 マネンテの作曲において演奏媒体は二義的なものであったようで、最初に吹奏楽で作曲され後にマンドリン合奏に編曲されたものや、その反対にマンドリン合奏のために作曲されたものが存在するなど、作曲者自身による作品の編曲が多く存在する。故中野二郎氏は戦前にマネンテと文通による交流があった。戦後、中野氏によって多くの作品が吹奏楽からマンドリン合奏へ編曲されており、本曲はその代表とも言えるものである。本曲ではマンドリン合奏に管楽器を導入することに否定的であった中野氏の編曲としては珍しくフルートが編成に含まれる版が存在する他、フルートを省き打楽器を加えた版がある。本日の演奏では、原曲を参照して微修正を加えた版で演奏する。なお、マンドリン合奏への編曲にあたっては長2度上に移調されているが、これは「メリアの平原にて」の作曲者によるマンドリン版と吹奏楽版の調関係と同一のものである。
 本曲は作者が歩兵第3連隊軍楽長であった1903年ごろの作品で、当時の著名な作曲家であるボルツォーニやヴォルフ=フェラーリらの賞賛を得たという。原題の"Festa di Nozze"は直訳すると結婚式の祭といった意味であるが、訳題の「華燭の祭典」は華やかな結婚式を意味する「華燭の典」と祭からの編曲者による造語であり、ほぼこの作品の固有名詞のように受け入れられている。
 本曲は次の3楽章からなる幻想曲である。
  I. 人々の祝福 Movimento di gioia nel popolo, Allegro con brio 3/4 ト短調
  II. 教会にて In chiesa, Andante Religioso 4/4 変ホ長調
  III. 家族の祝宴 Festa in famiglia, Allegretto festoso - Andante espresivo - Allegro con brio- Maestoso - Allegro con brio 4/4 ト長調
 第1楽章は三部形式に依る。リズムに動きのある楽想が人々の喜びの賑わいを想起させる。主題は短調に始まり一度長調になるがすぐに短調に戻る、マリッジブルーの心の揺れ動きを表すような作りをもっており、祝福するような中間部と対比を成している。第2楽章は自由な形式に依るが、倚音の2度下降形が楽章の統一感を作っている。繊細な和声の動きが教会の式典の厳かさを感じさせる。第3楽章は4/4拍子の新たな楽想に始まるが、緩急織り交ぜる中で後半には第1楽章の要素が多く再現される。せめぎあう楽想の祝福に導かれるように、最後には第1楽章の主題が全て長調となって現れ、幸福に包まれて曲が終わる。

参考文献:
 中野二郎著「いる・ぷれっとろ」http://homepage1.nifty.com/yasu-ishida/

第40回記念定期演奏会より/解説:kiyota