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2つの動機(モチーフ) (1982,1987改訂)

吉水 秀徳
Hidenori Yoshimizu (1961.8.7 Osaka 〜)

 作者は1961年大阪に生まれる。四条畷高校のマンドリン部を経て、大阪市立大学ギター・マンドリン・クラブでは指揮者として活躍しながら、自作「2つの動機(モチーフ)」を指揮、発表した。卒業後は京都を本拠とするエルマノ・マンドリン・オーケストラで活躍しつつ、作曲を行っている。当クラブの委嘱作品である「序曲」(1991)は第5回JMUマンドリン合奏曲作曲コンクールで第3位に入賞している。コンコルディアのエンディングテーマとして毎年演奏している「Dear Concordia」も作者によるものである。 本曲は1982年に作曲された作者の処女作である。初演後再演の機会が訪れなかったが、1987年、名古屋大学ギターマンドリンクラブが採り上げてから全国で爆発的な人気を博した。美しい旋律、わかりやすい構成は初心者にも取り組みやすいもので、若々しい躍動感にあふれた作品である。

 クラシック音楽を大別すると、あるテーマに沿って作られるもの(描写音楽やバレエ)と、音の配置の芸術性を追求する、わかりやすくいえば音の遊びを高度にしたもの(フーガや変奏曲)とに分けられる(大部分の音楽は両者の中間に属していると言える)。この曲は初めての作品である事もあって前者に大きく傾いているものである。
 冒頭、ギターの導きによって第1のモチーフが露骨に提示される。これを常に全体の中にあって中心にいる事を願望する存在とする。このモチーフは変形して自身を誇示するが、成功する間もなくしぼんでしまい、第2のモチーフが次に登場する。これは“全体”というものを表し、おおらかで明るく、また例えようもないほど美しい。
 第2のモチーフの助けを受け、第1のモチーフは中心に立ち、Allegro con motoで大いに活躍するが、その間第2のモチーフは支えとして登場する以外、一切登場しない。しかしAllegroの終わりとなる頃、旋律線にふと第2のモチーフがこぼれ、第1のモチーフは自身も“全体”の一端に過ぎなかったという事実を悟る。
 感動的に両者は融合し、曲はそのまま終わるかに思われたが、第1のモチーフは、その優しさのあまり生ずるであろう破局を第2のモチーフに感じ取り、独立して別の意味で中心を目指そうと決意する。
 曲自体はそれといった新しい要素もなく、むしろ既成の曲の二番煎じの感があり、曲の安っぽさとオリジナリティの乏しさは否定することができない。しかしエッセンスは3年以上も暖め増やしてきたものである事は保証できる。
(1982年初演時のパンフレットより作曲者の言葉)

第40回記念定期演奏会より/解説:Yon