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ツプフオーケストラのためのソナチネ第1番

Sonatine Nr.1 für Zupforcherster
ヘルベルト バウマン
Herbert Baumann (1925.7.31 Berlin〜)

 作者はドイツの作曲家で、ベルリンの国際音楽学校で学び、作曲をPaul HöfferとBoris Blacherに、指揮をSergiu Celibidacheに師事した。1947年から1979年までドイツ各地の劇場で音楽監督を務め、500以上の劇場音楽とおよそ40のテレビ映画音楽を作曲した。1979年以降はフリーランスの作曲家として活躍している。マンドリン音楽のためには、ギター協奏曲を初演するなど親交のあったギタリストS. Behrendの呼びかけで1962年にSaarlandiche Zupfmusik(ザールランドの撥弦音楽)を作曲、それ以降もマンドリンとギターのためのSonata Capricciosa(後にマンドリン協奏曲Concerto Capricciosoに編曲)、ツプフオーケストラのためのSequenzen、ギターとツプフオーケストラの協奏曲「鳥、果実、そして風」など継続的に作品を提供している。Baumannの音楽は限定的な和声進行の中にオルゲルプンクト、オスティナート、同型反復やゼクエンツ(Sequenzenなどはそれが作品のタイトルにまで現れている)などの現れる繰り返しが重視されており、要素が繰り返されるほどにテンションが高まるのが特徴であり特長である。
 本曲は、1960年代に作曲されたとみられる、作者のマンドリン音楽のための作品としては比較的初期のものである。Zupforchesterとはドイツ語で撥弦オーケストラという意味で、ドイツにおけるマンドリン合奏の形態である。通常マンドロンチェロを含まない5パートの編成により、本曲もその編成をとっているが、本日はマンドロンチェロとマンドローネを加えて演奏する。作者のマンドリン合奏のための作品では、特に初期の作品においてマンドリンのトレモロ奏法が全く使われておらず(後期の作品でも、トレモロと単打の使用箇所ははっきりと分かれており、混在しないものが多い)、本曲も全て単打にて演奏される。これはHermann Ambrosiusの影響以降のドイツのマンドリン音楽では必ずしも特殊なことではないが、前述のBaumannの音楽性と撥弦楽器の単打の響きとの相性はとても良いと言える。
 本日の第1部では近代的な書法による3楽章のソナタを2曲演奏する。それらの作風の違いをもお楽しみいただければ幸いである。本曲は第1楽章が展開部の無いソナタ形式、第2楽章が複合三部形式、第3楽章がロンド形式によるソナチネ(小規模なソナタ)である。第1楽章Allegroはホ短調の第1主題と提示がロ短調-ニ短調で再現がホ短調の第2主題からなるが、両主題は短3度(Baumannの曲で重要な役割を示すことが多い)下降の動機を共有している。両者はリズムによって区別されるが、この2つの主題の関連性によって展開部が無いソナタ形式に楽式上の充足感がもたらされている。第2楽章Andante, poco mossoはハ長調で、A(a-b-a)-B(c-d-c’)-A’(a’-b-a)の構成による。主部A内では付点のリズム、中間部B内では三連符のリズムが楽想を支配しているが、再現のa’では両者が縦に重ねられた形で再現が行われる。またa,dがバスの下降の順次進行、b,cがオルゲルプンクトという2つの要素を有しており、それが交互に現れるのが隠しテーマとなっている。第3楽章Allegro assaiは再びホ短調で、ヘミオラの多用や二連符と三連符の交錯などの複雑なリズムを有しながら快速に駆け抜けるロンドである。ロンド主題は短3度下降の動機を有しており、第1楽章との関連性をもたされている。

参考文献:
 Wikipedia_Die freie Enzyklopädie (ウィキペディア ドイツ語版)
 http://de.wikipedia.org/wiki/Herbert_Baumann_(Komponist)
 Polyeder für Zupforcherster スコアの作曲者プロフィール(Verlag Vogt & Fritz)

第41回記念定期演奏会より/解説:Kiyota