Remembranza〜The Passage of Time
(1980初稿版)
戸井田まこと

 作者は青山学院大学リズムマンドリーノの指揮者として活躍し、高校時代より始めた作曲は在学中よりその作品を自身の手で指揮をするなど、活発な作曲活動を展開した。卒業後も母校の委嘱により数作を発表している。本曲は氏の作品中で最も演奏機会の多い作品であるが、他にも「間奏曲(1980)」「バラードNo.0〜静かなる郷愁(1984)」「祈り(1985)」「6月の唄(1994)」などがある。
 本曲は1980年、同団の第19回定期演奏会で初演された氏の16番目の作品。その後89年のマルンドリンクラブでの再演時には改訂が施された。現在ではこちらの改訂版の演奏を行うべきであるが、当団ではあえて初演時の楽譜を用いて、瑞々しい魅力をもつこの初稿版を選択している。改訂版とは若干のオーケストレーションの違いや、後半の主題再現部が短くなっているなどの違いがある。曲はGraveで開始される短い序奏をもった三部形式で、主題はイ短調、中間部はハ短調で書かれており、情緒連綿たる主題の繰り返しと毅然とした歩みの中間部が美しい対比をなしている。タイトルとなっている"Remembranza"は『追憶』などと訳される事が多く、作者の学生時代の回想を意図していると考えられる。いくつもの繊細なメロディが走馬灯のように駆けめぐる様は過ぎ行く青春時代に想いを馳せて、私たちを『懐かしい時代』にいざなうかのように響きわたる。コンコルディアでは93年の冬の演奏会以来11年ぶりの再演となる。

'04 ウィンターコンサートより/解説:Yon


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