2つのエレジー
Elegie(1979)
柳田 隆介
( 1952. . sapporo〜 )

 作者は1952年北海道に生まれ、宮城教育大音楽専攻を卒業、作曲を福井文彦、佐藤真の両氏に師事。在学中は同大マンドリン部指揮者として活躍。77年には日本マンドリン連盟主催の第2回作曲コンクールにおいて「マンドリン合奏の為の二章」が1、2位なしの第3位に入賞。79年には本曲が佳作に入っている。近作には「フルートとマンドリンオーケストラの為の協奏曲」や「ボカリーズ」「ポートレイト」「Light Music 」など小品のシリーズがある。
 本曲は独立した2つの楽章から構成されており、それぞれに『その1』『その2〜 adieu,MichiKo』という題名がついている。これは本曲が第1楽章、第2楽章といった構成を表すのではなく、それぞれが独立した『エレジー』の世界を持っている為であろう。十余日の命を生きた作曲者の姪、路子(昭和53年に先天性心臓疾患で逝去)との永訣の時を綴ったこの作品は東北地区以外では殆ど演奏される事がなく、関東でも明治学院大学が例外的に頻繁に取り上げているのみである。作者の代表作『マンドリン合奏の為の二章』の躍動美とは対照的にほの暗い情緒と天国的に美しい『路子のテーマ』が交互に現れる様は作者の苦悩を現して痛々しい。
 『十余日の命を生きて路子が逝ってから二年が過ぎた。生きる事の意味さえ知らなかった彼女に死の静謐が訪れた時、苦しみに耐えるべく握りしめていた保育器の手すりから、その指を一本ずつ話していったという。死ぬまで苦しみしか知らなかった子供の思えば悲しい最後であった。』作者の記しているこの言葉はあまりに悲しい。今宵の演奏ではそうした悲しみよりも、むしろ『路子のテーマ』が奏でられるたびに悲しみが浄化され、亡き子のための子守歌として天に昇っていかれるよう祈りを込めて優しく愛の歌として歌いたい。

第24回定期演奏会より/解説:Yon


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