ハンガリー狂詩曲 作品68
Ungarische Rhapsodie
ダヴィッド・ポッパー作曲/中野 二郎 編曲
David Popper (1843.12.9 Prague〜1913.8.7 Baden)

 作者は19世紀後半から20世紀初頭に一世を風靡したプラハ生まれの名チェリスト。17歳にして世界的名声を博し、欧州各地への演奏旅行ではどこでも熱狂的な成功を収めた。1896年にはブダペスト王立音楽院教授となり、その地位のまま没した。彼は優れた演奏家であるだけでなく、チェロ曲の作曲家としても天賦の才に恵まれ、チェロのあらゆる技法を駆使して、燦然たる美しさとマエストロ的な効果を生み出した点で、秀でた存在と言えよう。彼の作品の味わいはこうした技巧的な才能面ばかりでなく、民族的色彩に満ちたその旋律の美しさにもまたあることは忘れられない。彼の小曲の大部分はこうした民謡旋律、あるいは民族舞曲に基づいて作られたもので、こうした意味合いから彼もまた19世紀後半の民族主義的傾向の作曲家の一人として数えることができよう。
 本曲は作者の作品中『マヅルカ』と共に最も親しまれているもので、7つのハンガリー民謡を取り入れ、色彩感あふれる理解しやすい作品となっている。テンポの遅い舞曲と速い舞曲の組み合わせで書かれており、優美さと躍動感ある旋律は大変魅力的である。原曲はピアノ伴奏のチェロ独奏曲であるが、マックス・シュレーゲル編曲による管弦楽版もよく知られており、中野二郎氏の編曲はこれを基にしたものと思われる。本日はカデンツァにレオナルド・ローズ校訂のものを用い、打楽器を省いて、原曲の味わいに近い形を再現してみる。なお本曲の終曲にはリストの『ハンガリー狂詩曲第六番』の最後の部分と同じ舞曲が用いられており、一層親近感を抱かせるものとなっている。本日ソロを務める石山君は一昨年のマンドリン独奏コンクールで本選に勝ち残った実力者で、今回の選曲も彼の十八番と言えるもので、伴奏をしながらも、彼の美しいトレモロに聴衆の皆様と一緒に酔いたいと思う。

第27回定期演奏会より/解説:Yon


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