絃楽の為のトリステ
(1984)
柳田 隆介 
( 1952. . sapporo〜 )

 作者は1952年北海道に生まれ、宮城教育大音楽専攻を卒業、作曲を福井文彦、佐藤真の両氏に師事。在学中は同大マンドリン部指揮者として活躍。77年には日本マンドリン連盟主催の第2回作曲コンクールにおいて「マンドリン合奏の為の二章」が1、2位なしの第3位に入賞。近作には「フルートとマンドリンオーケストラの為の協奏曲」や「ボカリーズ」「ポートレイト」「Light Music 」など小品のシリーズがある。本曲は仙台の社会人団体である、チルコロ ・マンドリニスティコ・フローラの委嘱により昭和59年に作曲された作品で同年八月に山形で初演された。氏の作品の多くはこの団体や宮城教育大など、宮城県の団体によって委嘱初演されており、同地区が全国組織の学生マンドリン連盟に属していないなどの事情も手伝って、 そのレパートリが全国的に知らしめられずにいる。近年では同士である宍戸秀明氏や内藤淳一氏の作品も演奏機会が増えてきており、邦人作品レパートリの重要な一角をなす作品群として注目を集めつつある。

 柳田氏の作品はいずれもほの暗い叙情とある種、諦観にも似た、澄んだ世界観を呈したものが多く、コンコルディアの指向とマッチした作品を愛奏してきている。本曲も17回定演で取り上げたものの再演となるが,より厚みを増した低音群の豊かな響きと憂いをたたえたマンドラテノールの美しい旋律をお楽しみいただきたい。

 撥弦楽器の為に書かれた作品は数多く存在する。しかし良質のそれは案外少ない。マンドリン合奏の為のもの、となると更に減少する。楽器の性能、絃の均一性あるいは均質性、奏者に関わる問題など、原因を追求すると、様々な要素が複合して絡み合っているのが解る。その結果、演奏される曲目が限定され各団体がレパートリーの確保に苦労する、という現状を生み出してしまった。 特にマンドリン関係のコンサートではその傾向が著しい。これはマンドリン音楽の将来を考えるとき、憂うべき問題である。「絃楽の為のトリステ」は前述の問題にひとつの解決を与えるべく企画された単一楽章の作品。旋律の構成音は各パートに配置され、同一パートでメロディとオブリガードを交互に、しかも確実に弾き分けるという高度な合奏技術が要求されている。したがって全パートが揃った時点で、初めて楽曲の全体が把握できる。 (作曲者記)

第28回定期演奏会より/解説:Yon


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