前奏曲第5番「南風」
(1994)
加賀城 浩光
Hiromitsu Kagajyo(1961.8.23 Miyazaki〜)

 作者は1961年宮崎県生まれ。2001年まで広島に在住し、マンドリンバンド「ブルーメサ」、マンドリンとギターあるいはマンドチェロ(*1)のデュオ「アコースティック・ボーイズ」での活動(現在も活動中)、楽団「Promenade」主宰等の活発な活動を行ってきた。現在、故郷宮崎に在住し、作曲・編曲活動及びマンドチェロ奏者として活動すると共に、各地の大学等で演奏指導を行い後身の育成にも力を注いでいる。又「Ji-CLUB」なる一種の音楽クラブを主宰し、自らの音楽を通し、全国の演奏者と交流を持つなど、活発な活動を続けている。合奏作品として「プロムナードI〜VII」「組曲」シリーズ、「前奏曲」シリーズ、他に小品あるいは独奏曲・二重奏曲を多数作曲されており、「プロムナードI」は既に現代ギター社より発刊、その他二重奏曲集も発刊予定である。又、先の6月5日には「プロムナードVII『Grand Adagio』」が、広島のプロムジカ・マンドリンアンサンブルにて初演された(この曲はプロムナードシリーズの最終作とのこと)。
 
当初、合奏曲を多く書かれていた氏ではあるが、近年は「マンドリン音楽の新ジャンルを生み出す」と言う理念の元、自らが発案し唯一のプロ奏者であるところのマンドチェロを使用した独奏曲や、マンドリンとマンドチェロの二重奏曲を主とした作品を多く発表している。その幾つかには、タッピング奏法あるいはサムピックを使ったフィンガーピッキングを取り入れることで、楽器の可能性を極限まで追求し、氏独特の甘く美しいフレーズと共に独自の世界を作り上げることに成功している。その成果は、マンドチェロ独奏曲CD「CGDG」として世に問われており、氏のホームページより購入可能である(*2)。
 
本曲は、当初マンドリンとギターの二重奏として作曲され、後にマンドリンオーケストラへ編曲され、1994年、ノートルダム清心女子短期大学ギター・マンドリンクラブによって初演された。

<作者による曲目紹介>
 本曲は与論島に行った際に、青い海から吹いてくる心地よい潮風を感じながら作った曲です。本来ギターとマンドリンの二重奏でしたが、初演のメンバーの子達に気にいってもらい、合奏曲に編曲しました。南の島では時間がゆっくりと流れているような気がします。そんなのんびりとした時間の中にいると、心地よい風にいつのまにやらウトウトしてしまいます。曲はゆったりとしたテンポで、風が吹くように揺れます。そんな私が感じた南の島の香りを味わってみて下さい。

<作者からの本演奏会へのお言葉>
 音楽が多様化している現在、マンドリン音楽もクラシックやオリジナルだけでなくポップ(大衆的)な世界がもっとあってもいいと思っています。それは流行歌のようにその時代だけのものになるかもしれません。それでも奏者とお客様が今を楽しめる事ができれば作者として嬉しいです。こんな機会を作って頂きましたコンコルディアの皆さん、またご来場の皆様に感謝いたしております。

*1.マンドリン属・ギターの楽器製作家である米丸健二氏(宮崎在住)と共同で開発した、マンドロンチェロとギターをミックスしたような楽器。音域はマンドロンチェロと同様だが、楽器の構造はギターに近く、又、通常マンドロンチェロであれば調弦は低いほうからCGDAであるところを、CGDGのチューニングにすることと(楽器としてはCGDAで演奏することも可能)、前述した奏法の導入等で、クラシックなマンドロンチェロあるいはギターとは一線を画した表現を可能にしている。元々Ovation(リラコード〜グラスファイバーの一種〜をバックに使ったピックアップ内臓のエレクトリックアコースティックギター類)のMandocelloがベースにあり、これを完全にアコースティックなものとして、暖かい響きを得られるようにすると共に、生音でもタッピング等で音が出やすいように改良したものである。

*2. 加賀城浩光・ジジ音楽工房 http://www.h4.dion.ne.jp/~jiji-m/

第32回定期演奏会より/解説:えぞ


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