「仮面」序曲
"Le Maschere" Sinfonia(1901)
ピエトロ・マスカーニ 作曲/ウーゴ・ボッタキアリ 編曲
Pietro Mascagni (1863.12.7 Livorno〜45.8.2 Roma)

 作者は1863年イタリア西岸の港町リヴォルノ生まれ。ミラノ音楽院でポンキエッリやサラディーノに作曲を師事したものの、勉学に耐えられずに中退し、ミラノのダル・ヴェルメ劇場の管弦楽団に加わり、チェロを演奏するようになる。ミラノ音楽院での同室には、5年先輩のプッチーニもいたと言う。ヴェリズモ・オペラ(写実的・現実的オペラ。現実的で生々しい血の匂いがするようなオペラ)の旗手であり「カヴァレリア・ルスティカーナ」は作者の代表作であり出世作である。が、これを生涯越えられなかったのも事実である。他の作品に「イリス」「グリエルモ・ラトクリフ」「シルヴァーノ」「友人フリッツ」等がある。最後の作品は「ネローネ」。ムッソリーニ政権を褒め称えたもので、このことが原因となり親交の深かった人達は離れていった(ファシズムに反対していたトスカニーニ等が挙げられる)。大戦後はムッソリーニに加担した罪で財産を没収され、1945年にローマのホテルの一室で死去している。

 本曲は作者のコミック・オペラ作品の一つである「仮面」の序曲。但し、オペラとしては、今日ではほとんど上演されることは無い。むしろ、斯界において、本日演奏する序曲の編曲版のみがよく取り上げられると言う皮肉な運命を辿っている。

 なお、編者に関してはここでは多くを語らないが、斯界では知らぬ者がいない至宝的存在。「交響的前奏曲」「夢の魅惑」「誓い」「彷徨える霊」「ジェノヴァ市に捧げる四楽章の交響曲(交響詩”ジェノヴァに捧ぐ”)」等、多くの作品を残している。作者の指導下にあった、ペザロのロッシーニ音楽院において、作者から直々に和声とフーガを学んだと言う。本曲における編曲は真に見事なもので、元々管弦楽曲である本曲を、あたかも最初からマンドリンオーケストラの曲であるかの如き曲に仕上げている。そう言う意味では、マンドリンオーケストラ版の「仮面」序曲は、管弦楽版とは異なる”もう一つの「仮面」序曲”として成立しているのではないだろうか。

喜歌劇「仮面」--------------
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台本 ルイージ・イリカ
作曲 ピエトロ・マスカーニ

1901年1月17日 ミラノ、トリノ、ジェノヴァ、ヴェネツィア、ヴェローナ、ローマで同時初演。ローマのマスカーニ本人指揮のみ成功。ジェノヴァに至っては最後まで上演されなかった。
【ストーリー】
無理矢理に陸軍大尉(貴族でもある)と結婚させられそうになった娘が、その祝いの席で、自分の名前も忘れるような秘薬を、ワインに混ぜて飲ませて混乱させてしまおう、と考える。計画通りに秘薬を飲ませることには成功したものの、結婚契約書を開いて関係者の名前を呼ぶ際に、全員が自分は誰だか分からなくなり、色々な人の名前を呼び集めて大混乱となる。最後には陸軍大尉は結婚詐欺師だったことが判明し、無事恋人と結ばれることで大団円となる。
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第33回定期演奏会より/解説:えぞ


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