ピアノとマンドリンオーケストラの為の協奏曲
「伝説の塔 アーギスをめざして」
(2005委嘱作品初演)
増井 めぐみ
Megumi Masui(Yokohama〜)

 作者は埼玉県在住の作曲家でピアニスト。東京芸術大学音楽学部附属音楽高等学校ピアノ科、東京芸術大学器楽科ピアノ専攻卒業で、これまでに実相寺昭雄監督の映画作品集『ファンタスマ』(音楽と映像の回路)、国際芸術連盟(JILA)主催のコンサート、フランス大使館後援の『ジャン・コクトー・ナイト』、平成14年度文化庁芸術団体重点支援事業高円宮憲仁親王メモリアル公演バレエ「ダンス ヴァンテアンIX・・・ローラン・プティの夕べ」で草刈民代ら、牧阿佐美バレエ団と共演など多くの公演でピアニストとして賞賛を受けた。またミュージカル『ザ・カーマン』ではシンセサイザー奏者としても絶賛を浴びている。作曲の分野では、コンサート『金子みすゞの生涯』で作曲・演奏のみならず、脚本・演出もこなし、多彩な才能を披露し、曲集やCDも出版した。作品には『金子みすゞ 歌と朗読』『金子みすゞをうたう』『歌って踊れる金子みすゞ』『うたとおはなし〜CD付き絵本』などがある。
 多才で天真爛漫、この人を表すのにぴったりな言葉である。増井さんというよりも、もう我々の中ではすっかり『めぐりん』で通っている。そんなめぐりんとはもう4回目の共演。彼女の音楽を一言で表現すると『煌き』。ピアノ協奏曲『響』では赤くきらめいて、ピアノとMOの為のバラードでは青くきらめいてくれためぐりん、今宵は初めて自作を引っさげて何色に輝いてくれるだろうか。
 曲は3つの楽章から構成されるコンチェルトだが、あえて第一話〜第三話とエピソード仕立てとなっている。全体を通してひとつの童話になっているのは、子供向けの作品をたくさん紡ぎだしている作者ならではのものと思う。

【作曲者より聴いていただく皆様へのメッセージ】
 『伝説の塔 アーギスをめざして』〜まず『アーギス』とは何だと思いますか?これは第一話冒頭の主題に表されたが音階『ラ(A)ラ(A)ソ#(Gis)』という音階で表現した、この曲全体を司るシンボルテーマです。『塔』は飛躍、飛翔からイメージされるとても高い場所の暗喩、『伝説』はいにしえから伝わる魔術などの秘められた神秘性を意図した比喩、これらのイメージの集合体として、このタイトルを命名しました。

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第一話〜荒波を越えて
賢者クリスとその父デモールの住んでいる村は、海を越え、はるか彼方に幻のように浮かび、伝説の秘宝を天蓋に隠すというアーギス塔に巣くう怪物達に魔法をかけられ黒雲で覆われてしまった。作物も育たなくなり、村人はみんな餓死して死んでいく、氷のように寒い毎日だった。クリスとデモールは、村人が全滅してしまう危機に瀕し、遂に怪物たちと戦いに向かう為に立ち上がった。待ち受ける荒波の波濤を越えていくクリスと父デモール。しかし向かい来る怪物の群れに力尽きた父は怪物とともに波間へと消えていった。戦いをイメージした第一楽章。

第二話〜父との別れ
ようやくアーギス塔のある島へたどり着くクリス。父デモールとはぐれて、森の中をさまよい歩くが、行けども行けどもアーギス塔は遥かに遠い。そんな中、…ドンドン…太鼓の音が聞こえてくる。恐る恐る近付いてみたクリスだが、怪物たちの火宴の中、父デモールがまさに処刑されようとしているのだった。鬼の形相で踊り狂う魔物たち。必死になぎ倒しながら近付いていくが、とうとうドーンという轟音とともに父は息絶えた。打ちひしがれるクリス。彷徨と悲しい結末のまつ第二楽章。

第三話〜魔法のペンダント
一人になってしまったクリスは、父の為、村人を救う為,勇気を振り絞ってアーギス塔を目指して立ち上がった。魔物や怪物を蹴散らしながら、太古より魔物に苦しめられてきた妖精たちの力を借りながら塔を目前にして、とうとう魔物たちに取り囲まれ、絶体絶命。しかしその時、父から譲りうけたペンダントが輝きはじめ、眩しい光がクリスを包む。光に包まれペガサスの翼を得たクリス。魔物たちは光の中に消えていき、クリスの目の前にはあの伝説のアーギス塔が・・・。勝利と未来に羽ばたく第三楽章。
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 こんなお話をイメージして、全体を構成してみました。お子さんを連れて聴いていただくお母さんにはお子さんにこんな勇気ある男の子のお話をしてあげてくだされば幸いです。そして大人の皆さんは、もちろんこんな挿話はなしで、ピアノ・ハープ・マンドリンオーケストラの音の伽藍をお楽しみください。

  『めぐりん、ピアコン書いてみない?』『え、まじ?うれぴ〜やるやる』こんな会話を居酒屋で指揮者と交わした昨年の秋。…私にオケなんて書けるのかしら…と不安を抱きながら、その頃は初めて出版する書物の付属CDの編曲やピアノトリオの作曲に追われる日々を送っていました。それらが一段落ついた時には年号が2005年に変わっていて、…ピアコン作らなきゃ…。出足の遅れたスタートでしたが1、2楽章は割とスムーズに筆が進みました。息詰まったのは3楽章。あるメロディーが浮かんでいたけれど、それをどこにどうやって挿入するかタイミングがつかめない。日の出から日の入りまで鉛筆が動かなかった日もありました。出来上がってからもこの最終楽章が不安で。しかし、実際オケとピアノを合わせてみたら1番盛り上がりが感じられて…ほっとしました。それと同時にマンドリンオケの迫力を感じました。ピックで弦をはじくから?いい意味での野性的な音がして今回私が表現しようとした『戦い』にフィットしたものになりました。さぁこれから始まるアーギス塔を目指しての戦い、聴いてくださる皆様はどんな想像をしてくださるのでしょう。

第33回定期演奏会より/解説:Yon


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