Impression II
(2005委嘱作品初演)
舟見 景子
Keiko Funami( 1959.4.28 Ishikawaken〜)

 作者は富山大学マンドリンクラブでマンドリンパートに所属。現在養護学校に勤務するかたわら、卒業後約10年のブランクを経て、1997年より「金沢マンドリン・アンサンブル」で活動を再開。1993年より同団体のために、『もののけ姫』などの映画音楽の編曲を手がける。
 
1999年、本格的な作品としては最初の『Impression1999』をNifty-Serve(当時)のクラシックMIDIフォーラムで発表、2000年の北陸三県合同定期演奏会にて初演し、この作品はたちまち全国規模での人気を博すこととなった。躍動感にあふれ、瑞々しい色彩に富んだこの作品は『素直に感動でき』『合奏の楽しさ』を再確認させてくれる作品として、現在では学生から社会人まで広くレパートリとなっている。

  本作は当団体での『Impression1999』の演奏(2001年)時の打ち上げで、ぜひ次回作はコンコルディアで初演させてくださいとの話があった事をきっかけに、当時より構想を深め、満を持しての初演の機会をいただけたものである。前作を発表したことで作者はより多くの人と出会い、より多くの音楽を耳にし、より多くの人生観と出会った事と思う。この曲が出来上がるまでのたくさんの出来事は時に、作者の背中を押し、時に立ち止まって方向転換を促し、時には自らのおかれた環境の変化そのものがまた、多くの示唆を与えて、たくさんの旋律やたくさんのリズムが楽譜に書かれては消え、慟哭や喜びの中からようやく結晶のような存在として『II』が生まれてきたのだと思う。そうした意味では作者は自らの人生そのものを音楽として赤裸々に我々にぶつけてきていると感じる。
 この曲は『1999』の『葛藤』に対し、『一途に前向きに』がテーマで、挑戦であり、乗り越えていく様々な障壁そのもの。その過程で諦めたもの、忘れたもの、置いてきたもの、折りにつけて思いだすけれども、その場にとどまってはいられない。こうした心理が描かれている。そしてまた、たくましい母として守るべきものがあるという確かな気持ち。語られる言葉が雄弁とか饒舌とかいう事ではない。そこには音が確固として、強く生きていく決意として言葉以上に語りかけてくるのである。後半に現れる、海の凪を思わせる優しくそして強い緩徐旋律にはひときわ作者の心情が伺えて圧巻である。そしてやはりその場にとどまらずに作者はまた『すばらしい明日』に向かって走りはじめる。

【ImpressionIIに寄せて】
 実は『頑張る』って言葉、嫌いじゃないです。心の中には弱さや迷いをいっぱい抱えて隠しようもないのですが、それでも前向きでありたいなという気持ちでこの曲を書きました。乗り越えた先にはきっと穏やかで光に満ちた風景が広がっていてほしいものです。
 
曲としては前作の雰囲気を受け継いでいます。いくつかの旋律がでてきますが、随所に上昇する三つの音形を用いました。他にも骨太な低音系のリズムや転調を多用しています。そんなところからも前進したい気持ちを感じていただければ幸いです。
 最後に今回の機会を与えてくださったコンコルディアの皆様に御礼申し上げます。(作曲者記)

第33回定期演奏会より/解説:Yon


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