セレナーデNo.2
(1979)
藤掛 廣幸
Hiroyuki Fujikake(1948. Gifu〜)

 作者は1948年岐阜に生まれた現代日本の代表的作曲家。初心者でもマンドリン合奏が楽しめる平易な作品や、各種コンク ールの課題曲をはじめ、ミュージカルや電子音楽、実験的作品に至るまで、広範な分野の作品を数多くものしてきた。1977年には世界三大音楽コンクールのひとつであるベルギーの「エリーザベト王妃国際音楽コンクール」において、日本人初の作曲部門グランプリを受賞している。近年では著名なイ・ムジチ合奏団の委嘱による『日本の四季』(蘭Philips ) や、世界的フルーティストJ.ゴールウエイとの共演による2枚のデュオアルバム(BMG-Victor) 、東海テレビ制作の『ふるさと紀行』、α派ミュージックの『海のこもりうた』(いずれもアポロン)など一般に入手可能なCDの録音も数多い。愛知県立芸術大学作曲科、同大学院修了。日本作曲家協議会会員、日本マンドリン連盟顧問。
 本曲は1979年、広島修道大学の委嘱により作曲、同年11月に初演されたセレナーデシリーズの第2作。もともと作者のセレナーデシリーズは書きためられたモチーフを自由な発想でつなぎ合わせたもので、楽曲の構築感が比較的乏しいが、本曲では冒頭主題と終楽章が同一のテーマで結ばれている点で比較的曲の結尾感や到達感といったものに長けている。
 全部で6つの楽章から成っているが、各楽章はアタッカで結ばれ休息は含まれない。第1楽章と終楽章に配された主題はもともと連城三紀彦氏のラジオドラマの為の劇伴として書かれた作品で、本曲以外にも『ロマンス』等のシンセサイザー楽曲に転用され、氏の代表的な旋律となっている。殊にどちらの楽章でも中間に現れる旋律は藤掛氏の数多い『泣き』の旋律中もっとも美しいもののひとつで、「初恋の胸のときめき」を現していると言われ、本曲中の白眉といえよう。静謐の中で徐々に愛が芽生えていく気持ちが少しずつ膨らんでやがて、言葉を交わしあい、やがて分かちがたい流れになってゆく様子はひときわ印象的である。第2楽章は Swing と記された弾むようなジャズ風楽章。第3楽章は、1楽章同様ドラマの劇伴から生まれた曲で、『川のほとりで(RiversideSerenade) 』という別名をもつ間奏曲風楽章。続く4、5楽章は同一モチーフを含むひとかたまりの楽章と言えるが、ここでの星のまたたくような弱音の旋律と、西部劇でも思わせるような勇渾なテーマの対象はダイナミックである。もともと物語性を持った曲ではないが、冒頭主題が回帰する様はなにかのストーリーを感ぜざるを得ないつくりになっているとも言えよう。

'97 ウィンターコンサートより/解説:Yon


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