GoHome Concordia

>>prev >>return >>next

Focus On/Off for String Quartet and Mandolin Orchestra (委嘱作品初演)(2014)

小林 由直
Yoshinao Kobayashi (1961.8.6 Yokkaichi~ )

 作者は1961年三重県四日市に生まれ、4才よりピアノを習いはじめ、四日市高校在学中より作曲を始め田中照通氏に師事した。山口大学医学部を経て、現在内科医として勤務。医学博士。1985年には、「北の地平線」で日本マンドリン連盟主催の第4回日本マンドリン合奏曲作曲コンクールにおいて第2位を受賞。当クラブでは1992年の「マンドリン協奏曲」、1995年の「音層空間」と二度にわたって作品を委嘱初演している。日本作曲家協議会 (JFC) 会員、JMU会員、日本音楽交流協会 (JAME) 顧問、日本音楽著作権協会 (JASRAC) 信託者。 2013年、神戸国際音楽祭2013 においてワークショップを担当し、「マンドリン音楽の特徴と未来」について講演を行った。
 本作品は当楽団においては19年振りの作者への委嘱となった。近年において作者は室内楽への造形が深く、またマンドリン系では楽器の構造を熟知した緻密な作品を産み出している事から、特に擦弦楽器であるヴァイオリン属と撥弦楽器であるマンドリン属との調和と対比をモチーフにした作品という事でお願いをしたもの。

 「これまで、いくつかの作品において「音の滲み」をマンドリンオーケストラで表現しようと試みてきました。マンドリン系楽器では、たとえ横に流れるフレーズといえども、一つ一つのトレモロの粒が集まって奏される「点描の」音楽です。このトレモロ奏法において、アタックがはっきりしない「焦点をぼかした」音楽は、通常の管弦楽のそれとは大きく異なった音響効果を生み出します。一方、点描であるが故にアタックが一つのタイミングに集中した時は、管弦楽よりもよりシャープな焦点を作ることが出来ます。
 この作品では、「点描の」マンドリン系楽器といわば「線描の」ヴァイオリン系楽器との違いを描き分けながら、両者により一つの音楽空間が生まれることを期待して作曲しました。
 前半ではトレモロやピッキングによる「点」と弦を奏することによる「線」の違いを際立たせます。中盤では弦楽とギターソロによるやり取りがあり、後半ではギター合奏によるミニマル音楽的な分散和音が流れる中を、マンドリン系楽器により焦点の合わないフレーズが流れて行きます。ここでは、本来アタックが緩やかな弦楽四重奏の方がむしろはっきりとした音像を結びます。そして次第にマンドリン系の焦点が合って来て、シャープな点による激しいリズムになり、そこに四重奏による線の音楽が重なって行きます。
 弦楽四重奏をいわば一つの楽器になぞらえた協奏曲の様な感じに捉えていただいてもよし、四重奏による線描の音楽空間とマンドリン系楽器による点描の音楽空間との対比という風に捉えていただいても結構です。この非常に珍しい編成による作品で、何か新しい音世界が生まれれば嬉しいです。」                  作曲者記

 今宵は2008年ウィーン国立歌劇場(ウィーンフィル)の招待オーディションに日本人女性として異例にノミネートされた経歴を持つ中島麻氏を中心として、日本有数の実力者である奏者の皆様をソリストにお迎えし、小林氏のイメージの中にあるフォーカスの音場を再現する事にチャレンジいたします。

参考文献:
 Yoshinao Kobayashi’s Music Website
 http://www016.upp.so-net.ne.jp/yoshinao/xiao_lin_you_zhinohomupeji/Welcome.html

第42回記念定期演奏会より/解説:Yon