組曲「スペイン」
Suite in 4 tempi "Spagna"(1922)
サルバトーレ・ファルボ・ジャングレコ
Salvatore Falbo Giangreco(1872.5.28 Avola〜1927.4.4 Avola)

 作者は1872年シチリアのアヴォラに生まれ、1927年同処に逝いた作曲家。近代音楽と民族音楽の中間をあった斯界の作品を、より純音楽的な世界に高めようと尽力した功労者。パレルモの音楽学校で、ピアノ、対位法、作曲を学んだ後、1896年「大管弦楽の為の叙情的情景とフーガ」を提出して卒業。その後は作曲に従事しながら、ニコシアの吹奏楽団の指揮者を務めた。作品には歌劇「フィオレルロ」、序曲「戦場にて」、オペレッタ「王女の物語」等がある。斯界においてはミラノの「イル・プレットロ」誌主催の作曲コンコルソに応募し入賞した「田園写景(1910)」、「序曲ニ短調(1911)」、そして本曲などが挙げられる。同コンコルソは主幹であったA.Vizzariが従来の甘美で軽快な民族色にあふれた斯楽の革新を期して始めたもので、斯界を内面的かつ普遍性のある音楽に高めた重要な位置づけにある。また彼は同誌に多くの論文を発表したが、その中には「何故マンドリンとギターが管弦楽に組み入れられないか」「オルケストラ・ア・プレットロへの編曲について」など興味をひくものがある。
 本曲は前述のように1921年、「イル・プレットロ」誌のコンコルソにて一等を獲得した作品で、ミラノ・マンドリン合奏団に捧げられたもので、斯界への作者の作品としては最も力のこもったもの。曲は四つの楽章から構成され、
1.Serenata Castigliana(カスティーリャのセレナータ)
2‐3.Jota e Canzone(ホタとカンツォーネ)
4.Bolero(ボレロ)
となっている(2、3楽章は続けて演奏される)。巧みなオーケストレーションは作者の真骨頂で、殊に現代では当たり前であるが、従来軽視されがちであったマンドロンチェロに重要な役割を与え、たくましく構築感のある和声を形成している。

第31回定期演奏会より/解説:Ozawa


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