マンドリンオーケストラの為の組曲
Suite fur Mandolinen-Orchester(1936)
アルフレッド・ウール 作曲/ヴィンツェンツ・フラトキー 編曲
Alfred Uhl (1909.6.5Wien 〜1992.6.8Wien)

1.Capriccio (綺想曲)
2.Sudliche Landschft (南国の風景)
3.Zahnrader(歯車)
4.Frohe Wanderung am Morgen(楽しい朝の散歩)

 作者は1909年ウィーンに生まれる。ウィーン国立音楽院で、ドイツ古典音楽の最後の正統的継承者と呼ばれたフランツ・シュミットに学んだ。しかしながら、その軽妙な感覚の作品でヴィーン的な洗練性を代表する人物である。音楽史上では“20世紀の抜きん出たオーストリアの音楽家”として記憶されている。卒業後は、チューリヒやパリ、ベルリン、アムステルダムで教鞭をとり1945年、ウィーンに戻り母校の教授となった。多くの作品はW.フルトヴェングラーやK.クラウスらによっても取り上げられ公表を博した。弦楽や管楽の為のアンサンブル作品にも優れたレパートリがあり本邦のウインドアンサンブルなどでもしばしば作品が取り上げられる。代表作には「古いドイツ民謡の主題による序奏と変奏」「4つの綺想曲」、オラトリオ作品である「ギルガメッシュ叙事詩」などがある。マンドリン合奏にもいくつかの作品を残しており、本曲の他に「スランス風組曲」「交響的行進曲」「ディヴェルティメント」などがある。作品の多くを補編しているのはヴィヴァルディやフンメルのマンドリン協奏曲の編曲や自身リュート奏者としても有名なヴィンツェンツ・フラトキーである。
本曲は1936年に作曲され、2本のソロマンドリン、マンドリン4部、マンドラコントラルト、マンドラテノール4部、ソロギター、ギター2部、リュート、ベース、ハープという比較的大編成向けに仕上げられた代表作のひとつ。4つの楽章はそれぞれが固有のタイトルを持ち、全く独立した存在としての集合体である。各パートは複雑にユニゾンで絡まりあい、同一旋律がトレモロとピッキングで意図的に別パートに現れる、同様に同一フレーズが異なるデュナーミクで別パートに現れるなど、一聴しただけではその複雑さが分かりにくい特徴的な性格の曲である。特にマンドラコントラルトが有効に使用されており、音色上も際立ったものがある。

第31回定期演奏会より/解説:Yon


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